我が家の鬼
今週のお題「鬼」
我が家には鬼がいる。
鬼はこの家に昔から住んでいる。
鬼は生まれた時から鬼ではなく、元は人間であった。
いつからか年に数回か鬼と化した。
家に新聞が届かなかった時、初めて鬼と化した。連絡して、新聞を持ってきた新聞屋のお兄さんに怒鳴りちらした。
「いつもいつも遅いし今日は届かないってどうなってんだよ!!」
顔が真っ赤に変わり目は険しく鋭い。頭からはなんと角が・・・!!
お兄さんは怯え、震える手を差し出した
「申し訳ございません。これ電話代です。」
と手のひらの中には10円玉が。
鬼はその10円玉を受け取ったかと思うと、その10円玉をお兄さんに投げつけた。
「こんなもの、いらんわ!!」
お兄さんはすみませんと言って逃げるように立ち去っていった。
まだ幼かった私は大人になった今でもあのお兄さんの怯えた顔は忘れられない。
それから時が経ち鬼も年をとった。
私も離婚を経験し、悩んだが鬼と住むことを決断した。
ユッチにとっても私と2人より、鬼とはいえ3人のほうが良いだろう。
それに鬼も年をとり丸くなっているだろうと。
ところがこの鬼は全然丸くはならず、今では人間の姿よりも鬼の姿が多いのであった。
人間は年をとれば早寝早起きになるのが普通だが鬼は夜型だ。
朝は弱く、昼ぐらいまで寝て、大好きな韓国ドラマをひたすら見ている。
そして夜になれば出かけて行く。どこに行くかは分かっている。
鬼は昔からパチンコが大好きなのである。
私が大学生でアルバイトを探していた時、鬼は時給が高いからと言ってパチンコ屋を勧めた。
そしてパチンコ屋で働くようになった。まぁまぁ名の知れた大学に通っていた私に周りの友達やパチンコ屋の人は「なんでパチンコ屋で働いてるの!?」と驚かれた。
今はそんなことないと思うが、当時はパチンコ屋はヤクザがやっているとかそういうマイナスなイメージがあったのだ。
ユッチに「誰が一番怖い?」と聞くと迷わず「鬼。めっちゃ怖い」と答える。
そりゃそうだろうなと思う。
ユッチが鬼に「遊ぼう」と言うとすかさず鬼と化し
「何で遊ばなあかんねん!!1人で遊べ」と言う。
でもユッチもめげない。鬼の機嫌が良い時に
「一緒に出掛けよう」
と言うと、めずらしく鬼にならず
「いいよ」と。
ユッチも喜び、おしゃれしようと指輪をつけたり、おもちゃもを持っていこうと支度に時間がかかっていた。
私がやばいなと思うと同時やはり鬼と化した
「何で行くって言ってからそんな時間かかんねん!!早くしろ!もぅ行かないからな」
私がそんな事を言うとユッチは必ず怒ってくるか泣き出すかのどちらかだが、ユッチも鬼はそういうものだと分かっているのか動じない。
そして何とか鬼も人間に変わりユッチと出かけて行った。
帰ってくると、クレープを食べ、ゲームをしていたらしくユッチは満足していた。
そして夜、ユッチが鬼に
「お風呂入ろう」
と言うと
「嫌!もぅ1人で入れ!!」
とまた鬼と化すのであった。